
最新留学の解説
Sは1号店を東京・江東区に決めたことから、まずは江東区内に店舗網を張り巡らせることになった。
ドミナント戦略にはどんなメリットがあるのか。
ドミナント戦略をとらず、店舗間の距離が長いと、配送のために移動時間がかかりガソリン代や運転手の人件費が高くつく。
店舗が同一地域に多くあれば配送距離は短くコストは劇的に低下する。
1店舗あたりの商品の配送数量が少なくても、同一地域の店舗の注文量を足し合わせればボリュームも大きくなりトラックの積載効率が上がる。
広告展開や販売促進も効率よく行われ、消費者の来店頻度の増加が見込めるのだ。
ドミナント戦略は確かに経営効率を高める手段であることに違いない。
しかし、実際に同一地域で加盟店募集をしてみると、前向きに考えてくれる中小小売店の人たちが多くいる保証はなにもなかった。
下町の江東地区は人口密集地。
しかも大型店が出店できるような広大な土地はあまりなく、商店街には人通りもあり中小小売店は繁盛していた。
そうした中でSのRFC(リクルート・フィールド・カウンセラー)と呼ぶ店舗開発部隊は、コンビニエンストア向けの中小小売店を探しては店主にSヘの加入を勧めた。
最初からすんなりと話を聞く店主は皆無だった。
知名度もほとんどなくコンビニという店舗形態すら知られていなかったから、推して知るべしだった。
RFCは門前払いを食らう苦汁の日々が続いた。
苦肉の策としてRFCの中には「(下町で知名度のあった)Y堂からやってきた」と語り、交渉の糸口を探ろうとしたこともあった。
それでもなかなか警戒心を解くことは難しかった。
たまにSヘの加盟を前向きに考えた中小小売店主がいると、今度はその店主の取引先の卸業者が自分たちの商権を荒らされることを嫌がり、Sヘの加盟を思いとどまらせることもしばしばあった。
店舗開発が進まないため、RFCからは「江東地区での出店、加盟店集めは難しい」とあきらめの声があがった。
だが、SはRFCたちの悲鳴に近い声に耳を傾けることなく、更に厳しい口調でこう言った。
「江東地区から絶対に出るな」「深川から一歩も出るな」と厳命した。
Sにとって「中小小売店の近代化」を創業の理念に掲げる以上、効率性を伴わない出店戦略は受け入れがたいことだった。
RFCたちは再び時間をかけ、主に酒販店主らをSの加盟店にしようと誘いを続けた。
当時、あるRFCは、Sに加盟すると1日あたりの売上高が30万円から50万円になると説明したという。
大抵の酒販店は1日あたりの売上高が15万円前後の時代だっただけに、RFCの説明を懐疑的に見ていた。
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